むし歯になりにくい生活習慣とは?

「毎日歯みがきしてるのに、どうしてむし歯になるの?」

そんな声を患者さんからよく聞きます。もちろん歯みがきはとても大切ですが、それだけでは十分とは言えません。実は、むし歯のなりやすさには「生活習慣」が大きく関わっているのです。

私たちの口の中では、常に細菌と唾液のバランスが保たれています。しかし、ある条件が重なるとこのバランスが崩れ、むし歯ができやすい環境になってしまいます。

その条件とは、「糖分の摂取頻度」「食べるタイミング」「口の中の乾燥」「磨き残し」などです。

たとえば、1日に何回も甘い飲み物を少しずつ飲んだり、お菓子をだらだら食べ続けていると、口の中が長時間酸性の状態になります。酸性環境では歯の表面が溶けやすくなり、むし歯のリスクが一気に高まります。

また、唾液には酸を中和したり、再石灰化を促したりする大切な働きがあります。ところがストレスやお薬の影響、あるいは口呼吸の癖などによって唾液が少なくなると、この防御機能が弱まってしまいます。

当院では、むし歯のリスクを見える化するために「唾液検査」も取り入れています。

唾液の量や質、むし歯菌の数、酸を中和する力などをチェックすることで、その方の体質や生活習慣に合わせた予防方法を提案できるようになります。

さらに、就寝前の飲食や、夜の歯みがきの省略も要注意です。寝ている間は唾液の分泌が減るため、むし歯菌が活動しやすい時間になります。寝る前のケアこそが、むし歯予防において非常に重要なのです。

むし歯になりにくい生活習慣を意識するうえで大切なのは、「回数」と「時間」と「質」のバランスです。

 

・だらだら食べを避ける

・食べたら時間をおいて歯をみがく

・甘いものは食後の“デザート”としてまとめて摂る

・夜の歯みがきを習慣にする

・水分補給は水かお茶を基本にする

・口呼吸や乾燥を防ぐ工夫をする(鼻呼吸、部屋の加湿など)

こうしたちょっとした意識の積み重ねが、数年後の歯の健康に大きく影響します。

予防歯科の基本は「自分のリスクを知り、それに合った生活を送ること」です。

気になる方はぜひ一度、唾液検査も含めてご相談ください。

 

日本補綴歯科学会専門医

風呂川 聡